「たぶんね……カレシったらいつも窓開けたまま外出するのよ。夕方家に帰ったとき、西日のせいで部屋がもわっと暑いのが嫌なんだって。カレが居ないときに勝手にあがりこんで驚かしちゃおうって思ってるんだけど、まだ家を知らないの。部屋に来ても何もないからつまらないなんて言うのよ」
芹沢が膨れっ面をしてみせた。だけど表情が満たされていて、二人の仲の良さが感じとれた。
「……じゃあ、僕は帰るよ。二人の邪魔しちゃ悪いし」
僕はブランコから立つと、逃げるように去ろうとした。
「な~に言ってるの! 学校行かないんでしょ!? お昼食べないと倒れちゃうよ。さあ、家に来なさい」
芹沢が僕の手首を掴んだ。突然のひんやりした感触にビクンとなる。芹沢の白い手はすべすべしていた。同じ女でもざらざらして赤らんだ母とは違うなと思った。
急な出来事に胸がドキドキした。僕は腕を引っ張られるがままに公園を出た。
芹沢が僕の腕をしっかり握ったままぐんぐん進んでいく。背中まである長い髪がなびいて、僕の鼻の頭をなでた。
新緑を思わせる柔らかい香りに包まれた。