去年の秋、体育の授業でマラソンが行われた。
「マラソンといっても小学5年生だから八百メートルの距離です。皆が驚くほど長くはないですよ」と先生が言ったけど、初めての僕にとっては長い距離だった。
僕は真中ぐらいの順位を狙って走った。本当は先頭を走る集団に入れたけど、わざと手を抜いた。
一位は皆から尊敬される。先生からも誉められる。
この時ばかりは、喧嘩が強くて父が暴力団組員である男子でさえ、一位の肩に手を置いて「オマエ、なかなかやるな」と負けを認める。

しかし、一位は明日から校内代表選手として、朝と放課後にマラソンの練習を強制的にさせられる。
暴力団組員の息子が「他校に負けんなよ!」と活をいれてくる。
なぜ、一位を獲るのだろう? 次も一位を獲らないといけないのに……
もし、次のマラソン授業で一位を獲れなかったら、先生にがっかりされ、他の生徒から「もっと速く走れよ」と非難を浴びせられる。