おばさん二人が大きな声で会話していた。あえて、皆に聞かせようとしている感じだ。両手に持っているピチピチの買い物袋から、ネギや大根が飛び出していた。

「ハイ! すいません、どいてくださーい!」

作業着の男二人がトイレの中から担架を運び出してきた。担架に青いビニールシートが覆い被さっている。
周囲がざわめいた。
おばさんが丸い目をしてヒソヒソ話しをした。同じ学校の名札をつけた下級生の女子がヒクヒク泣き始めた。茶パツの学生が担架に向かって携帯電話を向けた。

僕は鼻をクンクン鳴らした。担架からは人間の息のニオイが感じられず、死んでいることが分かった。
死後、そんなに時間が経ってないのだろう。腐敗臭がなく、一人分の人間を包んだシートの中でこもった血の生臭さが鼻をついた。どうやら胸の辺りから出血しているようだ。
先頭の作業員が黄色いテープをくぐったときに担架が傾いて、シートの下から片腕がだらんと出た。
濃い体毛に覆われていて、皮膚が日に焼けたように黒かった。
手首に皮膚が白い部分があった。ちょうど腕時計の形になっていた。
強盗が殺人を犯して時計を奪ったかもしれないと思った。