二人の会話が乾いた声質となって耳になだれこんできた。

「今日はもう一人いるのよ」

芹沢が僕の方を振り向く様子が、廊下に反射した陰で分かった。
僕は苦悶に絶えて顔をあげた。
芹沢の先で玄関に立っていた男と目が合った――苦しさが頂点に達した。
汗が全身の毛穴から噴出し膝がガクガク震えた。
ここにいるのは危険だ、危険過ぎる。