「会わないよ。っていうか、今日は会えないらしいのよ……」
「僕ね! この前カレをたまたま見かけたんだ。それで、後をつけた。家の場所が分かったよ」
「えっ! 家が分かったの?!」
芹沢が目を丸くして、黒い瞳が大きくなった。
「うん……だから、家を教えてあげる……」
僕は1通の保険会社のダイレクトメールを芹沢に渡した。
「っと……なにこれ?」
「実は、カレの家からとってきちゃった。住所がかいてあるでしょ。急に行ったら、驚くと思うよ」
僕は舌を出して笑うという、精一杯の演技をした。
「なかなか、面白いことしてくれるじゃん!」
芹沢が僕のデコをピンとはねた。満面喜びの表情をしている。