意識がはっきりしたときは、見知らぬ家の前の電柱に朝御飯をぶちまけていた。
何回も大きく息を吸って大きく息を吐いた。糸を引いて垂れる唾液が止まらない。酸っぱさがなくなるまで胃液を吐いた。

あんな形で再び会うとは思わなかった……今、僕は何をすべきなのだろう……父ならどうするだろうか?
父がいなくなった。母も突然どこかへ行ってしまうかもしれない。
明日から学校に行って、国語や算数を勉強してテストで良い点をとっても父は帰ってこない。
たった今出現した敵を倒しても、父は帰ってこない。

でも、たとえ遠く離れていても父が喜ぶことをしないといけないと思う。何もしなかったらあまりにも父が可愛そうだ。
真っ直ぐなことをしなければ。父のために……。

歩きながら気持ちを整理した。一生懸命考えた。
警察に男が犯人ですと言っても、唐突すぎて信じてもらえないだろう。僕の嗅覚が優れていることを説明しても、何アホなこと言ってるんだこのガキはと思われるだけだろう。何か証拠が必要だ。
例えば、昨日公園で発見された死体の臭いが付着している凶器を見つけることができれば、それを匿名で警察に送っただけでも捜査が発展するに違いない。
とりあえず、あの男をどうにかしよう……芹沢のことを考えるのはその後だ……。