ただ……もしも……一桁が5の日に男と芹沢が会ったら……僕はとんでもない光景を思い浮かべ身震いした。
でも、僕にはやるべきことがある。
いなくなった父のためにも。

西に傾きかけた日光が部屋内を照らしていた。物がないので、影一つできない。
僕は、便箋を折り目に沿って丁寧に畳んで茶封筒に入れた。敷布団の下に入れて、元通りに紙片が三角形に見えるようにした。
網戸をそっと開けて外に出た。来た道を戻り、アパートの門にまわった。
男の部屋番号が記入されたポストを開けた。指に錆のような黒いすすがついた。
ポスト内で、保険会社や半額セール実施中のスーツ店やらのダイレクトメールが何通も重なっていた。